メモのページ - チラシの裏メモ 3枚目

通信技術や気になった事を黙々とメモし続ける

HPE VSR1000をかじってみた

HPE VSR1000とは、その名のとおりサーバでお馴染みHPE(Hewlett Packard Enterprise)社製のソフトウェアルータ。
HPE MSRシリーズルータのOSであるHPE Comware 7からハードウェア依存な機能を省き、VMware ESXiなど仮想化プラットフォームをサポートするx86なサーバ上で動作するソフトウェアルータである。
自分がVSR1000に出会った経緯は謎。
家にある古いMac book (Late 2007)にインストールされているVirtualboxにてCisco CSR1000Vのデプロイを試みたものの、起動ボタンのクリックと同時にVirtualboxがフリーズ。別のソフトウェアルータを探していたところで、VSR1000を見つけたと思われる。
先週月曜日あたりまでMirageOS Unikernelに夢中になっていたが、ネット上でVSR1000に出会って間もなく急激に萎んだ。メンタルの不調の影響か。


OSは、HPの買収の経緯からArubaOSかと思いきや、H3C Comware 7というLinuxベースのOS。今はHPE Comware 7と呼ぶようだ。
ああ、そう言えばHPが3Com買収した際に3Comの子会社だったH3Cテクノロジー社はHPの子会社になったな。
CLIはH3C Comwareデバイスとほぼ同じ。
Ciscoで言うconfigue terminalに該当するコマンドsystem-viewには面食らったが、undoコマンドやsaveコマンドはそれぞれnoやwriteで代用出来る。
Ciscoで言うshowコマンドはdisplayコマンドになるが、一部の確認コマンドではshowが使える。
VSR1000は日本国内での導入実績が非常に少ない為だろうか、日本語で読める情報が殆ど無い。
HP/HPEのH3C ComwareスイッチやMSRルータで検索すると、少しだけヒットする。
よって、自分の場合は英語版のコマンドリファレンスやHPのスイッチ(H3Cのスイッチ)、ネット上のMSRルータの設定例を参考にしながらぽちぽちコマンドを打って暇つぶししているといった感じ。


Virtualboxへのデプロイ
既にVSR1000は削除済みにつきデプロイや設定手順はメモ書き程度しか残っていない為、残念な事に詳細は不明。
まずはVirtualboxを立ち上げ、「新規」設定
・名前:任意の文字列
・タイプ:Linux
・バージョン:Other Linux (64-bit)
・メモリーのサイズ:1024MB
・仮想ハードドライブを作成。vhdでもvmdkでも良い

仮想ハードドライブ作成後
・一般:システム設定にて「I/O APICを有効化」のチェックを外す。起動順序設定にてフロッピーディスクのチェックを外す。
・ストレージ:.isoファイルを選択。
・ネットワーク:アダプター1とアダプター2を作成。
自分の場合、両方とも割り当てはブリッジアダプター。アダプタータイプはIntel PRO/1000 MT Server (82545EM)、プロミスキャスモードは全て許可。

上記の設定完了後、VirtualBoxの起動ボタン(英語版の場合はStartボタン)をクリックし、VSR1000のデプロイ開始。
VSR INSTALL MENUの画面は表示されたら <1> Fresh Installを選択。
Enter `yes` to continue, anything else to return menu: にてyesを打ってEnter
Enter `yes` to reboot, anything else to return menu: yesを打って再起動
Please remove the disk, close the tray (if any) and press ENTER to continue: Enterキー叩く
再起動後、Press ENTER to get startedが出力されたら、Enterキーを叩くとプロンプトが出てくる。※古いバージョンの場合はと出力される。


デプロイ完了
再起動完了後、display versionコマンドを叩いてOSのバージョンを確認した。
実行可能なコマンドは下記のリンク先を参照。リンク先はいずれもH3CやHPのスイッチの実行例なのだが、VSRルータにおいても一部を除き実行が可能である。
情報は非常に少ない。Googleなどで「HP VSR1000 Command Reference」など英語で検索するとヒットするコマンドリファレンスを使用するしかないかも。

<HPE>display version
HPE Comware Software, Version 7.1.064, ESS 0518
Copyright (c) 2010-2016 Hewlett Packard Enterprise Development LP
HPE VSR1000 uptime is 0 weeks, 0 days, 2 hours, 7 minutes
Last reboot reason : User reboot
Boot image: flash:/VSR1000-CMW710-BOOT-E0518-X64.bin
Boot image version: 7.1.064, ESS 0518
  Compiled Dec 20 2016 16:00:00
System image: flash:/VSR1000-CMW710-SYSTEM-E0518-X64.bin
System image version: 7.1.064, ESS 0518
  Compiled Dec 20 2016 16:00:00

CPU ID: 0x01000101, vCPUs: Total 2, Available 1
1.00G bytes RAM Memory
Basic    BootWare Version:  1.09
Extended BootWare Version:  1.09
[SLOT  1]VNIC-E1000             (Driver)1.0

<HPE>



いじってみて思った事など
・当然の事ながら、BUFFALOの家庭内用のルータVR-S1000とは別物である。
・もう開発終了? 2018年以降新しいバージョンはリリースされていない模様。
・動作は非常に軽快。最新版でさえRAM設定は2GBでも多いくらい。最新版でなければRAM設定は800MB前後有れば軽快に動作する。近年高スペック化が著しいソフトウェアルータの中では貴重な存在。
・ドキュメントサイトへのアクセス方法が非常に分かりづらい。My Networking画面右側のMy Support内のManualをクリック ⇒ ずらりと並んでるサービスからVirtual Ethernet Router (Virtual Service Routerは無い)を選択 ⇒ HPE VSR1000 Virtual Services Router、HPE VSR1000 Virtual Services Routerの順に進むとフォーラム的なページに移るが、ここでDocumentation Manualsをクリックしても反応無し。
・しかし、一度はアクセスしドキュメントのpdfファイルをダウンロードが出来ている。あの時ブックマークすれば良かったと後悔。
・60日間トライアルライセンスの入手元が不明。しかしライセンス未適用であっても設定内容の保存、外部との通信が出来ている為、遊び程度なら一通り出来そう。


今後どうする?
暇潰し用として使い続けるだろう。(2020年10月30日追記:削除済みです...)
HPE Comware 7のコマンドは、最初はdisplay current-configrationなど確認コマンドdisplayや管理者権限モード移行コマンドsystem-viewには戸惑うものの、show run(ここではdisplay current-configuration)のフォーマットはCisco IOSに似ている上、一般モード~設定モード~設定~保存~確認の流れはCisco IOSと同じである為、HPE Comware 7にはすぐに慣れると思った。
しかも、10年以上も前のMac bookで 軽快に動作するとは思ってもいなかった。
次回は、Windows機のVirtualboxにデプロイしてあるVyOSとの間でBGPピア張ってみようかと思う。


投稿4時間後に追記
・IPアドレスやホスト名等の基本設定やスタティックルート、eBGP設定をやっていて感じた事。
思っていた以上にCisco IOSとHPE Comware 7との間にコマンドに差異が有った。かつては両者の間で見た目上差異が無かったらしいが(よってCiscoに訴訟を起こされた経緯を持つ)、その影響だろう「何となく似ている」。
いい意味でハマリそう。
・HPEのサイト内の商品一覧にはVSR1000、Virtual Services Router 1000は無かった。薄々と気付いていたが販売終了の製品のようで、やはり今更感満載なソフトウェアルータであった。
・一部のバージョンでは、pingはMPLSなオプションしか無く疎通確認に困る事がある。

2020/10/30追記
1. 現在、現行バージョンのアップデートは継続している。
2. 当記事で指すVSRとはHP/HPEのソフトウェアルータであり、Nokia(旧Alcatel-Lucent)のソフトウェアルータではない。

2021/3/31追記
当記事を書いた時点ではHPEにユーザ登録しなくてもダウンロードが可能であったが、今は不可能な状態になっている。



参照したサイト等
https://h10145.www1.hpe.com/support/SupportLookUp.aspx My Networking
https://h10145.www1.hpe.com/downloads/SoftwareReleases.aspx?ProductNumber=JG811AAE&lang=&cc=&prodSeriesId= ダウンロードサイト
https://support.hpe.com/hpesc/public/km/product/5195141/Product#t=Documents&sort=relevancy&f:@kmdoclanguagecode=[cv1871440]&hpe=1 ドキュメント
https://qiita.com/shadowhat/items/b89493435bceffc6ddfb HPEスイッチ(旧H3C)シリーズ 設定別コマンド早見表
https://qiita.com/0tuy0r0hi/items/81a2a2a89cc988aeaac7 【随時更新】HPE スイッチ コマンド【運用編】
https://qiita.com/yuta_k0911/items/cce137f1b68827b10a73 HPスイッチのコマンド集