メモのページ - チラシの裏メモ 3枚目

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kemp LoadMasterをかじってみた

無節操な事に、かじってみたシリーズ第3弾となってしまった今回の対象は、kemp LoadMasterというロードバランサの仮想アプライアンスのコミュニティサポート版。

以前より、無料で使用出来、且つ自分用PCのスペックで軽快に動作するロードバランサの仮想アプライアンスを探していたところ、kemp LoadMasterを発見。
F5 BIG-IP LET VEは過去に試用版ライセンス発行済み且つ試用期限切れ、A10 vThunderは試用版ライセンス発行済みであるもののデプロイ先のAzure VMにて毎月の課金が...という中、Googleでフリーのロードバランサを検索していたところ、GEEKFLAREというサイトの「10 Open Source Load Balancer for HA and Improved Performance」に辿り着き、そこでkemp Technologies社製ロードバランサ LoadMasterの存在を知った。
他にZEVENETやNeutrinoやSeesaw等も候補に挙がったが、自分の環境において導入のし易さややってみたい事が最も合致したのがLoadMasterだった。
業務でロードバランサいじっているし、復習や動作確認目的で自分PCに導入してみようか...の手始めに少し「かじってみた」。



まずはユーザ登録
・Free LoadMaster Load Balancer (https://freeloadbalancer.com/)にてユーザ登録。kemp Technologies本家サイト (https://kemptechnologies.com/)内の「30-Day Free Trial」ではない事に注意。
Downloadボタンをクリックするとユーザ登録画面に移る。
所属会社名やメールアドレスの登録が必須となっている事に注意。フリーエンジニア(Freelance)でも登録可能。
・ユーザ登録後、ダウンロードが可能になる。自分の場合、Virtualboxにデプロイする為にVirtualbox版をダウンロードした。



デプロイ
・ダウンロードしたFree-VLM-Oracle-VirtualBox.zipファイルを展開し、更にLoadMaster-VLM-7.2.50.0.18765.RELEASE-Oracle-VirtualBox-OVF-FREE.zipを展開。
中に有る.ovfファイルを右クリックからデプロイ開始。
・デプロイ完了後、GUIログイン。URLはVirtualboxの窓内に表示されている。
・GUIの初回ログインの際、kemp IDとパスワードを入力しLicense Nowをクリック。
・License TypeはFreeの方をを選択し、Continueをクリック。
・Home画面に遷移したら、System Configuration > Network Setupの順に移り、インタフェースeth0とeth1の設定が可能になる。
eth0にVirtualboxのAdapter1、eth1にAdapter2がアサインされる。
・Local DNS Configuration > Hostname Configurationの順に移り、Set Hostnameにてホスト名の設定が可能になる。
・CLIも提供されている。Virtualboxの窓からログインし、LoadMaster Configurationの画面にて 2 Service Management (CLI)を選択しEnterキーを叩くと、Virtualboxの窓の中にてコマンドを打てるようになる。コマンドに関しては、LoadMaster CLI Interface Descriptionというドキュメントを参照。
・デフォルトのusernameはbal である。rootやadminや社名ではなく何故balなのかは不明。



Free版について
ユーザ登録画面で登録したメールアドレスに、Kemp Technologiesからメールが来る。一番最初に来るメールにてコミュニティサポート版の機能期限に関して記載が有る。学習目的であれば問題無いレベルと思われる。
・HAの設定が出来ない。
・Configのバックアップが出来ない。
・スループットが20Mbpsに制限されている。
・他の機能は商用版と同じ。
・試用期限は無い。GUIのトップ画面内「View License」をクリックすると、License Information欄内に「Licensed Until unlimited」の表示有り。
・2020/7/16追記:デプロイ後1ヶ月以上経過したが、設定~疎通確認~負荷分散確認まで問題無く使えている事を確認済み。



いじってみて思った事
・ホストOS側の必要スペック。F5 BIG-IP LTM VEやA10 vThunderがストレス無く動作する程のマシンスペックは必要としていない。
・起動ログを見ると、OSはLinuxベースである事が分かる。
・GUIはA10 Thunderを更に簡素化したような感じ。
・GUI設定はF5 BIG-IPやA10 Thunderより直感的。基本的な設定は、GUIの設定項目を上から順に Basic Properties ⇒ Standard Options ⇒ Advances Properties ⇒ Real Serversという流れで行う。勿論、後戻りして設定変更や設定追加する事は可能。
・一応、ロードバランサとして一通りの事は設定出来る印象。しかし細かな部分の設定には不満が有る。かゆい所に手が届かない、重箱の隅は突けないといった感じ。
・ロードバランサの動作を知る為の教材としては良いと思う。今となっては低スペックとなっているCore i3-2350M、4GB RAMなPCでも軽快に(?)動作する。
・日本に販売代理店が数社有る。GoogleでKemp LoadMasterで検索するとヒットする。当記事で扱っているコミュニティサポート版もサポート対象であるかどうかは不明。
・ドキュメントはkemp社のサイト内に一通り揃っている。
・日本語版のドキュメントは非常に少ない。英文ドキュメントの内容はO'REILLYやCisco Press等の洋書より文が短めである為、読み易い。しかしこれは裏を返せば情報が少ないという事。
・みやたひろしさんのサーバ負荷分散入門という参考書は、Pool MemberをReal Serverに、Load Balancing MethodをScheduling Methodに読み替える等でリファレンスとして使える。ロードバランサの基本的な動作に関してはF5 BIG-IPもKemp LoadMasterも同じである。
・ovaファイル右クリックデプロイ後は改めてVirtualbox側で設定変更する必要は無い。2048MBの仮想RAM、2つの仮想CPUコア、2つの仮想NICが有れば充分。
・F5 BIG-IPのiRuleやA10 ThunderのaFlexのような、スクリプトを書いてトラフィック制御する機能は一応有る。Content Rulesがそれに当たる機能のようだが、スクリプトを1から書くものではなく、GUIでルールを設定する。
・F5 BIG-IPのRoute DomainやPartitionにあたる機能は、Kemp LoadMasterには無さそう。無さそうと言うのはKemp LoadMasterのサイトでは見た「ような気がする」のだが、自分が今使っているコミュニティサポート版ではその設定が見つからない。



今後どうする?
・暇潰し用として今後も使ってみようと思う、
・CLIに関しては上記に挙げたLoadMaster CLI Interface Descriptionというドキュメントだけではどれだけの事が出来るか分からない。
少なくともA10 AEOSで出来る事は出来たらいいなと思っている。
・次回は複数のFTPサーバを繋いで遊んでみよう。今の超不安定なメンタルの下ではすぐに別の機器に心移りする可能性は充分に有り、kemp LoadMasterは今回きりかも知れないが。




https://freeloadbalancer.com/ Free LoadMaster Load Balancer
https://kemptechnologies.com/ Kemp Technologies ※30日間期限の試用版との違いは不明
https://geekflare.com/open-source-load-balancer/ 10 Open Source Load Balancer for HA and Improved Performance
https://debslink.hatenadiary.jp/entry/20200613/1592014142 追記:kemp LoadMasterによる負荷分散設定 - FTP編
https://debslink.hatenadiary.jp/entry/20200614/1592115319 追記:kemp LoadMasterによる負荷分散設定 - HTTPサーバ編
https://debslink.hatenadiary.jp/entry/20200629/1593357476 追記:kemp LoadMasterによる負荷分散設定 - HTTPSサーバ編
https://www.amazon.co.jp/dp/4797377798/ サーバ負荷分散入門(みやたひろし著,2014年)